滋賀では飲食店が集う街ではなくのどかな田園地帯にポツンと店を構えるも、全国にその名を轟かせ、県を代表する人気店として、約10年君臨。銀座移転後はコース1本で勝負するも、多くのフーディーたちから支持を受け、予約の取りづらさから“プラチナシート”と称される【銀座 しのはら】。オープン翌年からミシュランの星を獲得し、2023年現在、4年連続ミシュラン二つ星を獲得している。名声を得てもなお進化を続ける、日本屈指の人気懐石料理店。
銀座しのはら 篠原 武将 氏
しのはら・たけまさ●1980年滋賀県生まれ。18歳から料理の道を志し、大阪の「京料理 熊魚菴 たん熊」、京都の懐石料理「山玄茶」など名店での修業を経て、故郷・滋賀に戻り27歳で開業。滋賀県湖南市では約10年間、全国から食通が集まる人気店として名を轟かせ、予約が殺到。2016年、36歳で銀座へ移転し、オープンした「銀座しのはら」は翌年からミシュランの星を獲得し、2023年現在、4年連続ミシュラン二つ星を獲得している。
銀座しのはらとは
「どうしたらお客さまに喜んでもらえるか」の一心が、伝統的な日本料理を進化させ続ける
なだらかな里山の風景に、琵琶湖がもたらす豊かな食材。そんな滋賀の情景を慈しみ、敬う心が生み出す「銀座しのはら」の料理は、「絵画のような美しさ」と評され、食べ手に感動を呼んでいる。
「小さい頃の記憶がとても鮮明なんです。例えば小学校へ入る前に住んでいたすごく古い田舎の家の間取りもいまだに全部覚えていますし、ひな祭りの飾りつけや食卓に並んでいた料理も覚えています。田舎でワンパターンだったので記憶しているのかもしれませんが(笑)。滋賀で生まれ育った自分が『懐かしい』と思い出す情景が盛り付けに反映されるので、田舎で育った自分の料理は“田舎料理”であって、場所が銀座に変わっても、本質は変わらないのだと思います」
こう話すのは、「銀座しのはら」の篠原武将氏。学生時代は将来有望な空手選手として大学へ推薦入学の話もあったが、「断る口実としてとっさに『手に職をつけたい』と言った」ことが、料理人の道へ入った契機だったという。「熊魚菴たん熊北店」や「山玄茶」など名店での修業を経て、2007年、故郷である滋賀で「日本料理しのはら」を開業。飲食店が集う賑やかな街ではなく、田畑が広がるのどかな町にポツンとお店を構えたにも関わらずその名を全国に轟かせ、約10年もの間、県を代表する人気店として君臨した。
「『山玄茶』の増田伸彦大将が、とにかく“お客様を喜ばせる”ということを大事にされていて、いまの自分のスタイルはその影響を強く受けていると思います。たとえば、お客さまが同じ月の2回目の来店であれば、その場で仕込みを一から変更するほど。もちろん厨房はものすごく大変なんですが、それ以上にお客さまに喜んでいただきたいという気持ちが強く、そのための器使いや盛り付けもとても勉強になりました」
「常に、どうしたらお客さまに喜んでもらえるかを考えている」からこそ、“こういう料理でなくては”という概念にとらわれず、格調高い日本料理を日々アップデート。滋賀が誇る信楽焼で設えた真っ白な陶壁を背に、12席のカウンターが“劇場型懐石”と評される所以だ。
料理に対しても自分に対しても真摯に向き合うことで、新たな進化を楽しむ
銀座二丁目にあるビルの地下。銀座という一等地でのチャレンジに加え、カウンター12席・おまかせコース1本での真っ向勝負は、口コミサイトなどで「国内1位」の評価を受けるなど多くのフーディーたちを魅了。すぐさま予約困難店となり、ミシュランガイド東京2018から一つ星、ミシュランガイド東京2020から現在まで二つ星を獲得し続けている。2023年現在、4年連続ミシュラン二つ星を獲得。現在も3ヶ月先の予約枠は解禁と同時に埋まってしまうプレミアぶりだ。
「料理人として修業して10年目に滋賀で開業し、さらに10年後の2016年に【銀座しのはら】として移転オープンしたのですが、今後、長く都会で暮らしていけば都会の料理に変わっていくでしょうし、もし海外に行ったら海外の料理に変わっていくのが自然で、環境が投影されていくことに逆らうこともありません。結局、料理というものは自分の経験から自然とでてくるものなので、自分が積み重ねた時間や、人と接したときの気持ち、記憶に残っている感動などがすべて自分の経験値となって表現されていくもの。今は田舎に住んでいるわけではないので、これから山の雰囲気を忘れてしまっても、自分の感覚を無理にとどめることはしません。そうしてしまうと違和感しか残らないので、料理に嘘が出てきてしまいますよね」
料理に対しても自分に対しても嘘がなく、真摯に向き合うからこそ、環境の変化にも順応し、さらなる昇華に繋げることができるのだろう。例えば、滋賀と東京では水質の差も大きかったため、自らの料理に必要な水を求め、2年間かけてさまざまな方向性から試し、根本の水から変えることに。肝となる出汁も、水の種類からとり方、数種類の合わせ方まで何度も試行錯誤しながら、突き詰めていったという。
また、東京の市場では滋賀よりもさらに食材の幅が広がり、調理によって産地を細かく使い分けるようになった。例えばハマグリは、煮るなら三重のもの、焼くならややかための九十九里産…と、どういった料理や味に着地したいかで選定する。
「自分自身も、東京に来てからは新たな味や食材に出合ったりして、今後、自分が美味しいと感じる味わいも、きっと変化していくと思うんです。料理人として本当に美味しいと思えるものしか作りたくないですし、その瞬間の感覚やそれまでの経験値で、味わいや盛り付けも変わっていくべきだと考えているので、銀座でお出しする料理もどんどん変わっていくはず。僕自身もそれを進化として楽しみにしているんです」
料理に対しても自分に対してもいっそう純度を増していく篠原氏。その“粋”なるフィルターを通して、伝統的な日本料理が昇華していくさまは、今後も食べ手を惹きつけてやまない。
CHEF’S COMMENTS
シェフからのひとこと
今回は西京焼きを作らせていただきました。
西京焼きは日本料理の伝統的な技法で、居酒屋さんから料理屋さんまで様々な料理人さんたちが様々な西京焼きを作って来ました。
今回は丁寧に丁寧に作った西京焼きをご家庭でも楽しんでいただきたい、日本伝統の味を楽しんできただきたいという思いでこのお料理を作らせていただきました。
是非ご家族皆様でお楽しみください。
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