インド料理界を代表する人気シェフたちの集まるイベントにも講師・スピーカーとして参加するほどの実力者であり、常に斬新で新しく美味しいメニューを提供し続けている、近隣の下北沢と並ぶカレー激戦区・三軒茶屋で常に行列が絶えない人気店。TVなどのマスコミにも多く取り上げられ、その人気は開店以来留まることがない。
熟練した2人のインド人シェフと、インドを知り尽くした店主・山登伸介さんのコンビネーションから作り出されるカレーは、南インドを中心に特定の地域に捉われないインド料理のいいとこ取りで唯一無二の味わいに夢中になるファンが増え続けている。
シバカリーワラ 山登 伸介 氏
やまと・しんすけ●1976年大阪府生まれ。専門学校を卒業後、上京しアパレル企業に就職。休暇を利用して東南アジアやインドを旅する中、土地ごとの食文化に惹かれ、現地の味の再現を通して調理に目覚める。28歳で勤務先を退職し、キッチンカーでカレーの移動販売をスタート。その後、本格的なインド料理を学ぶため銀座『グルガオン』に入る。約2年の修業を経て『シバカリーワラ』の屋号で移動販売を再開。2013年、東京・三軒茶屋に店を構えると、行列の絶えない人気店に。インド本国の感覚を大事にし、現在も年にひと月以上インドを訪れ新たな味の追求に余念がない。
シバカリーワラとは
インド人シェフによる現場仕込みのテクニックに、日本的な感性とアイデアを融和させて生まれる『シバカリーワラ』のインド料理。味の核を司るのはオーナーの山登氏だ。はじめてインドを旅したのは20年ほど前。それからの訪印歴は本人さえも数えきれない。メニューと店の世界観を常にアップデートし、新たなファンを増やしている。
バックパックの旅で出合ったアジアの味の再現がすべてのはじまり
「20代前半は好きだったファッションの仕事に就き、音楽の自主制作やなんかに夢中でした。カレーどころか海外にも全く興味がなかった。当時の同僚にバックパッカーでアジアを旅する人がいて。なんだか面白そうだなと、僕も一人で東南アジアを旅してみたら、気がつけばバックパックの旅が病みつきになっていました。」
アジアの街は活気にあふれ、山登青年を大いに刺激した。とりわけ関心を惹いたのは、その土地ごとの料理だ。現地にしかない調味料を買い求め、帰国すると舌の記憶を頼りに旅先で出合った料理づくりに没頭した。味が記憶に近づくほどに、料理そのものが面白くなった。
「はじめてインドへ行ったのは28歳の頃です。デリーやジャイプル、バラナシといった北インド定番の観光地でしたが、今まで巡ったどの国とも違う強烈な印象を受けたんです。人々の暮らしや文化、何もかもが新鮮で面白く、特にインド料理にどんどん興味が湧いて。この旅がインドにのめり込んでいくきかっけでしたね。」
帰国後は、本格的なカレーづくりに拍車がかかった。スパイスを炒める香りに包まれ、「カレー屋になりたい」と思った。山登氏は翌年すっぱり会社を辞め、キッチンカーでの移動販売に乗り出していく。
現地視察の風景。各国のスパイスに触れ、新メニューに想いを巡らせる。
食体験を礎に味の再現を探求し、インド人シェフと育んだ独自のインド料理
この頃の山登氏はスポンジさながらにインドのことを吸収し、知識を身につけていった。料理本を読み漁り、地方によってカレーの味が違うと知ると実際に様々な地域に赴いた。食べて回り、自分の中のイメージと答え合わせをしていく作業は楽しく、それが独立への足がかりともなった。
「飲食未経験からキッチンカーを立ち上げましたが、やはり食を仕事にする上での知識が全然足りないと気づいて。一旦キッチンカーをやめ、銀座のインド料理店『グルガオン』で修業したんです。でも任されたのはホールでした。もっとも厨房に入ったところで、インド人コックは安易にレシピを教えたりはしません。玉ねぎの皮をむいたり下ごしらえを手伝いながら、横目で調理を観察し、自宅で再現する日々でした。」
料理の腕を上げながら、2年後には独立。3カ月ほどインドの主要都市を食べ歩き、2013年、三軒茶屋に店を構えた。
「開店までの準備期間中、たまたま修業時代に同僚だったインド人シェフが働き先を探していると知り、急きょ一緒にお店をやることになりました。彼は僕にカレーを教えてくれた師匠でもあったので、心強かったですね。文化や仕事に対する考え方の違いで、時には怒鳴り合いの喧嘩もしましたが、それも互いを認め合うための必要なプロセスでした。うちではインド仕込みのテクニックと僕のアイデアを掛け合わせて独自のインド料理を提供していますが、その基盤は彼と共に築いたものです。インド人シェフに料理はお任せという店が多い中、協業しながら自分たちらしいスタイルが確立できたことが今も大きな強みになっています。」
インド人シェフと二人三脚で紡ぐ「進化し続けるインド料理」
現在、カレーを担当するディパックさんとタンドール担当のマダンさんとの三人体制で「シバカリーワラ」の味を紡ぎ出す。
「今、うちで出している『アスラムバターチキン』は、まさに彼らと一緒に作り上げたオリジナルメニューです。タンドリーチキンのようなグリルしたチキンにヨーグルトとバターをアレンジしたソースがかかったものですが、もともと6~7年前に北インドのオールドデリーで出会った料理がベースなんです。僕は初めて食べたときの感動が忘れられず、どうしてもうちの店で再現したかった。それで5年ほど前にディパックさんをその店に連れていったんです。 “おいしい”を共有して、一緒に試行錯誤して作り上げたメニューです。今ではオリジナル色のほうが強いですが、彼らは下積み時代に伝統的な調理法を習得していますから、技術やスパイスの知識は秀逸。そこは僕も適わないところです。だから僕は、彼らが不得意な新メニューのアイデアを考える。そうやって補完しながら良い料理が創れたらと思っています。そのためにも常にインド料理や他ジャンルから新しい何かを得て、それをアウトプットすることで店や料理をアップデートすることを意識しています。」
常連客たちを魅了する「アスラムバターチキン」。濃厚なバターとヨーグルトの旨味と香ばしいチキンがたまらない。
開業以来、今も毎年必ず1カ月近い休みをとり、インドのあちらこちらへ旅をする。現地の料理教室や有名レストランの門を叩き、研修させてもらうのが目的だ。
「ムンバイの『ボンベイキャンティーン』は今のインドを代表するレストラン。インド料理のキッチンは男性が多い中、そこは若い女性が働いているような先進的なお店です。研修の際、シェフが海老の頭を炒めて海老オイルを抽出していたんです。基本的に出汁を使わないインド料理で、その調理は衝撃でした。伝統的な調理法にとらわれず、もっと新しい手法で美味しい料理が生み出せるはずだと、とても刺激になりました。」
2020年山登氏が実際に研修入店した『ボンベイキャンティーン』。
現地の最新情報を吸収し続けることで進化を続ける。
インド旅は、山登さんにとって一年の間にジャパンナイズされた自身の舌をリセットする大切な時間でもある。「本場の空気に触れインド料理を食べると、またインドの味覚に戻る。原点に還る旅なんです。」
山登さんはそう言って目を細めた。謙虚さと飽くなき探究心が美味しさの原動力。インドを突き詰めながらもインドに固執することなく、新たなインド料理のカタチを追い求め、山登さんはこれからも旅を続ける。
CHEF’S COMMENTS
シェフからのひとこと
本格的なカレーを自分で作ることに興味はあるけれど、たくさんのスパイスを揃えたり、透明になるまでタマネギを炒めたりすることは少し面倒。そんなスパイス料理のハードルを下げて、少しでも手軽にインドカレーを作れるようにパッキングしました。
奥が深いスパイス料理の導入編として、楽しんでくれたら嬉しいなと思っています。しかも包丁いらず、ひとつの鍋に食材を加えながら30分たらずで本格的なインドカレーが出来上がります。
このミールキットをきっかけにスパイスの世界にはまって、新大久保辺りにスパイスを買いに行こうとか、そんな人たちが現れたら作り手冥利につきます。
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